交通バリアフリーの思想は世間に浸透し、近年整備される公共交通機関はその考えと無縁であることを許されない風潮が広まってきている。
早いうちから低床電車を市電市内線に導入するなど、バリアフリーに対して積極的であった札幌市交の影響を受けた定鉄であったが、札幌市交が2006(平成19)年に地下鉄南北線全区間へのホーム安全柵(ホームドア)導入を決定した事がこの車両が登場するきっかけである。すでに6000系および5500系の導入で地下鉄乗り入れ車両の全20m4扉化を完了していたのだが、急行用に運用されている2600系の扱いが問題となっていた。そもそも2600系は廃車となった国鉄157系および181系の台車・床下機器を転用し、新造車体を載せたモノだったこともあり車体に対して下回り・電装系の老朽化は年を追うごとに悪化していた。
初期型の一部は90年代後半からJR485系廃車発生品の電気機器・台車へ更新するなどのリニューアルが行われていたが、ホームドア設置に合わせて思い切って新車導入を行ってはどうだ?と言う意見が出ていた。また同時に、デッキ無しとは言え2扉クロスシートの2600系はラッシュ時に3両編成が何本も遊んでいる状態を作り出しており、無駄が多いという批判も有った。また、急行列車は時代の変化に伴い定山渓温泉の観光客より石山・藤野・簾舞地域の利用客が確実に座って移動するための列車…と言うイメージが強くなりつつあり、観光列車としてのテコ入れを行う必要も言われつつあったのだ。
将来的にホームドア設置が決定された2006年以降、ホームドアに対応した新急行用および、藤野・簾舞方面からの乗客の確実な着座サービスの提供を目的に6000系をベースにした新急行用車両の開発が始まった。当初は通勤輸送も考慮して、サービス低下を承知の上で4扉固定セミクロスシートあるいは座面面積を大きく取った4扉ロングシートで検討されたが、近鉄、JR東日本仙石線、東武東上線などでロング/クロスを切り替え可能なデュアルシート車の導入が始まっており、着座サービスの提供と汎用性の両立という観点ではコストはかかるものの、有効と判断された結果、新急行車は4扉デュアルシート車導入と決定された。これは車体設計を多くの面で共通化している東武50000系のバリエーションとして東上線TJライナー用の50090系が登場したこともあるらしい。
だが、汎用性を重視した設計となった結果観光列車としては魅力に乏しい、と言う意見もあった上に着座サービスの観点から行くと指定席車にはJRのuシート並の差別化を図りたい…という意見が営業サイドから出たため、車体設計を共通化した2扉クロスシート車が登場することとなった。観光用にある程度特化したこの車両はハイデッキでこそないが、最近の車両としては珍しく屋根まで回り込んだ側面窓や定鉄車両としては初めてのトイレ設置等、特急として十分な車内設備となっている。この車両は定鉄初の特急車と言う事もあり、7000系のバリエーションとしてではなく別個の形式として扱われ、かつての2等車モロ1100+クロ1100型にちなんで「1100系」と命名されている。
車体設計・基礎スペックは両形式とも6000系と共通としたが、運用柔軟性の観点から4両編成を基本とし、6000系からMM’ユニット+Tを抜いたTac+Mu+Ta+Mucユニットを採用した。また6000系運用の反映から回生ブレーキの失効に備えた抵抗器の搭載等が行われ、あたかも登山電車を思わせるいかついシルエットになった。車内設備は前途の通り7000系は車端部専用席を除いて住江工業製デュアルシートを採用したが、座面バックパネルや手すり等の一部部品に不燃加工を施した道産木材加工品を用い、Sばねを持たない薄いシートで十分なクッション性を確保するため、座面に鉄道車両としては初めてデルタ工業製3次元立体織物を採用するなど通常の6000系との差別化を図っている。1100系は同様の構成による回転式リクライニングシートが設けられている他、一部内装素材の難燃性木質素材採用や自動販売機・トイレなどが設置されている。
2008(平成20)年10月に第一陣として7000系4両編成2本、1100系2両編成2本が登場したが、今後は6000系と合わせて2011(平成23)年に予定されている地下鉄区間へのホームドア設置までに2600系を置き換えていく予定である。だが、ただでさえ高価な6000系よりさらに高価なこの車両の導入については景気の悪化も手伝い、批判的な意見も無いわけではない。
なお、完成直後の一時期北海道観光キャンペーンの宣伝を目的として7000系は8両編成で東急東横線などにおいて運用されている。これは将来2WAYシート車を東急が導入することを検討している事の表れなのか、ファンの間では話題を呼んでいる。
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