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03:札幌市営路面電車  
札幌市交通局 A910型超低床連接車(現在)
札幌市交通局A910型車両解説
 

初の近代型ワンステップ低床車A900型を投入した後、市内線は新車導入より既存車両のリニューアルを主眼に据えた政策を行っていた。これは当時まだ比較的在籍車両の車齢が浅かったこと、オリンピック直後から建設工事が始まった市電東豊線との連携を主にした苗穂西線や西3丁目線の建設など、車両への投資を先送りにせざるを得ない状況が続いていたことが有るため、車両全体の質を上げる方向でリニューアルを…と言う考えであったと思われるだが、A900型4編成導入でA850型は置き換えられたものの、同じく老朽化していたA800型や810型、設計に無理が有った為に使いにくい車両であったものの、輸送力不足のため運用が続けられていたディーゼル車改造型連結車A870型などは早期の置き換えが必要である…と言う意見が交通局内では早い時期から出ていたのは確かであった。

また、1987(昭和62)年にフランスはグルノーブル市に新設された市電用のアルストム製超低床車両の存在も、A900型で「楽になった」とは言えど車椅子や高齢者に取っては乗り降りが大変である…と言う不満が出ている事を知る交通局と東急車輛に取っては引っかかる存在ではあった。
  特にグルノーブル市電車両の超低床方式は東急車輛スタッフを大きく刺激し、遂に1988(昭和63)年。A800、870型置き換え用目的によるA900後継車の開発はスタートを切った。
 当初はグルノーブルの65%低床に対してワンマン運転を可能にすることを目的として100%低床の単車2両を連結したようなスタイルが検討されたが、車軸レスになってしまい駆動機系統やブレーキ系統が特殊で実車による試験を行うには時間がないこと等から、ツーマン乗務+パッセンジャーフロー方式によるグルノーブル車と同じ65%低床方式を採用することとなった。だが、低床面積を少しでも増やす観点から両端の動力台車を動軸のみ通常車輪とし、従軸側の車輪を通常の610mmに対して380mmと言う超小径車輪とした台車を採用し、台車部分を「階段」ではなく「スロープ」として有効面積を増やせる設計とした。が、座席配列が高床部分をクロスシートとしたため、この設計は返って無駄になってしまった側面もある。中間台車は国産初の無車軸方式を採用し、低床部を可能な限り広げることに貢献している。この無車軸台車はアルストム車がいくつかの面で特許を取っており、その特許に抵触しないように設計するのがかなり大変だった…と言う逸話が残っている。
 車体デザインは高張力鋼の加工技術向上も有ってA900のそれよりも車体限界を考慮したやや丸みを帯びたものとなり、A820/830型を近代化したような印象のマスクとなっている。また、市電市内線用車両として初めての冷房を搭載し、一部を除いて窓を固定式としているのも特徴である。
 車内は札幌市電としては初めてスタンジョンポールを採用したほか、入り口周辺のポールを円形にすることでつり革を円形に配置し、乗客の余裕を保ちつつラッシュ時の詰め込みにも対処できる構成となっている。メカに関してはVVVFインバーターがGTOサイリスタによるものと成っているほかは、基本的にはA900型の小改良にとどまっているが、インバーターの性能向上に伴いA900型に比べて勾配や急加速・減速性能は格段に向上した…と現場では評価されているらしい。車内内装は運転席に関してはハンドルの横軸化やモニター装置の設置、バックミラーに代わって後方CCDカメラの設置、行き先表示幕のLED化などかなりの面で新しいものが搭載されており、近代的なLRVとしてのイメージをより確固たるモノにしているだろう。

低床部概念図

A910型は1989(平成元)年10月に試作1編成が、翌1990(平成2)年に2編成、1991(平成3)年に3編成が導入されてA800、870を完全に置き換え、札幌市内線の低床率を大きく引き上げることに貢献した。その後1995(平成7)年の札幌市交通局CI政策で塗装をバークグリーン+アイボリーのツートンに切り替えた他、2002(平成14)年の交通バリアフリー法施行に伴う車椅子スペースと外付けステップの設置、2003(平成15)年の車内チケットキャンセラー設置によるワンマン対応改造で車掌台スペースを撤去するなどの改造を受けつつ、現在も市内線の主力として活躍を続けている。

■コメント

 東急デハ200の系譜上にあるワンステップ車を1980年代初めに出したのなら、そのまま発展させれば早いうちにノンステップ超低床車登場になるだろう…という考えでA900後継は早いうちから超低床で行く事を決定していましたが、「1980年代末に設計された超低床路面電車」のデザインって言うのもまた難しいいんですよね。この時期バブル景気も相まって、新交通システム整備などは行われていたけど路面電車に関しては1980年代前半のそれをそのまま引きずるような車両ばかりが出ている状態でしたから。(車体デザインに関しては広島電鉄3800、3900なども有りますが…)思い切って独自のセンスでまとめてみました(笑)丁度、グルノーブルのアルストム車が出て間もない頃だし、それに触発されて超低床として生まれたことにしてますから、グルノーブル型+A830÷2と言った印象のデザインにしています。異径台車採用は今年(2007)年に試験を行った川崎製試験車SWIMO-Xのパクリ…だったりしますが、車軸付き台車で低床面積を増やすためにはコレしか実際、方法が無いんですよね…。といってもSWIMO−Xのような「補助輪付き1軸台車」ではなく、元名鉄モ800等が使っており、昔から採用例の多い古典的タイプの連接台車に成っていますが(^^:台車カバーが付いているのは異径台車の場合、側面にむき出しにすると小径車輪が弱く見えるのと、雪付着対策をかねている想定です。

本当はボンバルディアのGT型並の直角カルダン+無車軸構造による100%低床化も考えたのですが、流石に時代から言って無理が有るのとA900型の系統樹上にある車であることを強調したく、部分低床方式で行く事を決めました(笑)まぁ広島電鉄ですらコストのかかる低床車を交通バリアフリー法施行まで入れなかった事を考えると、この時代に低床車導入は無理あるだろ〜とか思われそうですが…。

車両詳細
製造初年 1989(平成元)年 台車形式 両端台車:東急車輛製TS332型台車
(積層ゴム軸箱支持/空気バネ方式/異径車輪)
連接台車:東急車輛製TS333型台車
(積層ゴム軸箱支持/空気バネ方式/無車軸構造)
改造初年   電動機・駆動形式 MB-5005C(120Kw)片軸のみ駆動
編成あたり2基
全長(3車体連接) 22500mm(8500mm+5000mm+8500mm) パンタグラフ形式 東洋電機製PT-710B(バネ上昇式Zパンタ)
全幅 2240mm 制御方式 GTOサイリスタVVVFインバータ制御
(IC2M)三菱電機製
全高(パンタ折り畳み面) 3315mm ブレーキ方式 発電ブレーキ併用電気指令空気ブレーキ
重量 12.8t(両端A/B車)/8.2t(中間C車) 運転最高速度(加減速度) 65km/h(加速3.5km/s。減速4.0km/s)
乗客数 160名(75+10+75) 在籍両数 三連接X6本 計6両
製造メーカー 東急車輛株式会社    
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